ジン・トニックの歴史

「ジン・アンド・トニック・ウィズ・アイス・アンド・レモン、プリーズ」
これは、大昔、初めて、こちらの英語学校で学んだ時、パブでのドリンクの注文の仕方で教わったフレーズのひとつ。

ジンをトニック・ウォーターで割ったジン・トニック(英語では、ジン・アンド・トニック gin and tonic)は、イギリス東インド会社の社員が、派遣先のインドで考案したカクテルであると、先日、イギリス東インド会社の歴史に関するドキュメンタリーでやっていました。

18世紀にインドへ送られた東インド会社の社員の死亡率は非常に高かったのだそうです。母国とはまるで違う、気温も湿度も高い土地、そこに潜む熱帯病はまさに命取りだったわけで。特に、6月から9月にかけてのモンスーン期は、ヨーロッパから来た居住者にとっては、生きるか死ぬかの季節。ある年のモンスーンシーズンには、カルカッタに住むヨーロッパ人居住者3分の1が死亡したという記録も残っているようです。ベンガル地方へ移り住んだイギリス人の平均寿命は、モンスーン季節を2回、などと言われていたという事で、毎年、9月後半には、モンスーンを生き延びた人たちは、ほっと一息。番組では、インドのカルカッタにある、サウス・パーク・ストリート墓地を映していました。ここは、1767~1790年の間、そうして亡くなったイギリス人を埋葬した墓地だという事で、使用が短期間のわりには、墓石でいっぱい。東インド会社は、インドでのそんな需要に答えるため、まだ名前を刻んでいない墓石をたくさんイギリスから送りこんだそうです。

まだ熱帯病に対する医学的知識が足りない時代、東インド会社は、アルコールを飲むといいかもしれぬ、と墓石の他に、大量のワインなども送り込んだそうですが、これは、ただ、酔っ払いを増やすだけの結果となったようです。

ただし、ひとつ、マラリヤと熱病に効くとされるものがあった・・・南米産のシンコナ(cincona キナ)の木の皮から抽出されるキニーネ(quinine、英語ではクウィニーンと発音します)。キニーネは、マラリヤに利く薬が開発されるまで、こうした熱帯地方へ居住したヨーロッパ人の間で使用されていたようですが、この味が、とても苦いものであったため、東インド会社の社員たちは、これに砂糖、炭酸水、更にジンを足して飲んだ・・・こうして誕生したカクテルが、ジントニック。これに、更に、アイスとレモンをスライスしたものを加えると、汗だらだらの天候の中、うーん、爽快、リフレッシュ。

アルコールをほとんど飲まない我が家では、ジン・アンド・トニックを自宅で作ることはほとんどないですが、トニックウォーターに、氷と、レモンかライムのスライスを浮かべて・・・というのは、時々飲みます。トニック・ウォーターは、炭酸水に砂糖とキニーネが入った清涼水ですが、キニーネには副作用があるなどと言われているため、最近のトニック・ウォーターに含有されるキニーネはごく少量。それでも、きりっとした味はさわやかです。トニック・ウォーターで有名な会社は、写真のシュウェップス。ボトルのラベルには、インディアン・トニック・ウォーターと書かれています。

何でも、日本で販売されるトニック・ウォーターには、本物のキニーネは一切含有されていないのだそうです。そのため、味が、甘味が強く、イギリス人含む西洋人の口にはあわないのだとか。私は、日本でトニック・ウォーターを飲んだ事があるか、記憶から消えているので、実際、日本市場用のものが、どんな味がするのか断言できませんが。

イギリスに旅行し、パブへ入ったら、ビールもいいですが、夏であれば、パブの庭などで、ジン・トニックもお勧めです。バーへ行って「ジン・アンド・トニック・ウィズ・アイス・アンド・レモン、プリーズ!」

*ジンをベースにしたイギリス産の飲み物には、他にもおなじみピムズがあります。こちらも、そろそろ飲みたくなるシーズンに突入です。

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